岐阜県の関市板取に、NHKの「あさイチ」やネットで取り上げられた「モネの池」があります。でも、この名で有名になったのは最近のこと。根道神社の脇にある、名もない美しい池でした。
刻々と表情を変える、不思議な池。
モネの池の看板が立つ駐車場からは、池がどこにあるのかわからず、とりあえず人が歩く方に向かいます。すると、お花屋さんの温室の向こうに、何やら人垣が見えるではありませんか。池の周りに立ち並ぶ人々、カメラを手にひたすら池を覗く様子が、異様とも言える光景。私も、その隙間を狙って撮影してみました。
ただの池じゃん!
正直な印象を申し上げますと、あまりにネットに上がっている映像が芸術的すぎて、期待したほどファンタジックな世界ではございません、というのが最初の印象。私の妄想癖が災いして、期待過度だったのでしょうか。
気分は軽く萎えるも、よく見ると、スイレンと一緒に、コウホネという黄色の珍しい花が咲いていました。スイレンの丸い葉と違い、コウホネは細長いハート型です。
次第に、魔法にかかる。
第一印象は、期待したほどではなかったのですが、池をぐるっと一周するうちに、なぜか魔法にかけられたように、この池に魅了させられます。
池は、見る角度や、降り注ぐ光の加減によつて、その表情を変化させるのです。
常に流れ込む湧き水で、透明度が高く、鯉が宙に浮いているかのように見えます。
池の底の土が白いので、水が翡翠のような色です。目が涼しい、端末の画面ばかり見ている目に、ひと時の癒しがもたらされました。
モネの睡蓮の世界。
ここは、池の底にグリーンの藻が生えていた場所です。こちらの方が、モネの絵に似てませんか?景色が映りこんだ水面、水中、そして水の底といったいくつもの階層が重なり、現実と幻想が入り混じった世界に連れていかれます。
実は、偶然の産物だった池。
ウィキによると、もともとは1980年頃に、高賀山の伏流水を利用してできた、灌漑用の貯水池だったそうです。それを、隣にあるフラワーパーク板取さんが、除草し、睡蓮やコウホネを植え、地元の方々が、飼えなくなった鯉を池に放したとのこと。
そのことが意図せずして、モネの睡蓮の絵を彷彿させる景色をつくり上げ、SNSでブレイク、テレビなどで放映されると、一気にモネの池の名で有名になったということらしいです。
静かな山間の小さな池が、今では休日とのなると、3000人もの人が訪れる観光地になるとは、きっと誰も想像しなかったに違いありません。
池の底に棲む片目の魚・銀蠱(ギンコ)
ここはモネの池なのに、なぜか漫画「蟲師」に出てくる不思議な池を思い出してしまいました。その池は、トコヤミという蟲と、それに寄生するギンコという魚の形をした蟲が棲む、少し怖い池なのです。ギンコはトコヤミが食べた蟲を、その光で分解してしまうのですが、人が浴びすぎると、全身が白くなり、目を失い、やがてトコヤミになるといった話です。
目に心地良い、この池を見ていても、ギンコの池に見えてくるネガティブな私、妙な角度からはまってしまったモネの池でした。
なお訪れるなら、水が濁る雨の日は避け、曇りより晴れのほうが光が差し込み、美しいそうですよ。
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