【コロナ禍おうち花火】純国産線香花火には「序破急」の詩があり音楽がある。

愛知と九州でつくられた純国産線香花火には、燃え尽きるまでに牡丹、松葉、柳、散り菊への4段階への変化が見られます。江戸から続く日本の伝統美を感じました。

 




日本古来の、線香花火の復活。

国産線香花火、大江戸牡丹

線香花火が作られたのは、江戸時代とされています。近年、安い中国産花火の流入により国内での生産が減少、1988年には製造工場が国内に1社だけになっていたそうです。

およそ300年続いた伝統の技は途絶えかけていましたが、そこで立ち上がったのが、東京の花火問屋、山縣商店。愛知県岡崎市の三州火工と、昔のレシピをもとに2年の歳月をかけて純国産線香花火を完成させました。

この「大江戸牡丹」は、和紙の染め上げの色がとても綺麗で、細い持ち手は意外にもしっかりしていて、ピンと張りがあります。付属の説明書にあるとおり、斜め45度にしても、くにゃりと曲がったりしません。

線香花火は垂直に垂らして行うものと思っていましたが、斜めにすることで設置面が増え、中心の火玉が落ちにくくなるようです。火花の変化を、牡丹・松葉・ちり菊まで確認することができました。

国産線香花火、不知火牡丹

こちらは九州の名品、筒井時正商店の「不知火牡丹」です。生産の火を消したくないという思いから、7年ぶりに再発売されました。火薬の配合、紙の厚さにもこだわり抜き、作って燃やすこと何百本、実験を繰り返し生み出された逸品です。

線香花火

こちらは中国製品ですが、和紙の質から見ても、風格の違いが歴然としています。

線香花火に映る、人生の起承転結。

線香花火の特徴の一つとしては、その燃え方が、牡丹、松葉、柳、散り菊と4段階に変化すること。スーパーやホームセンターなどで、お手軽に購入できる中国製の線香花火は、情緒を味わう間もなく、あっという間に終わってしまいます。4段階の変化はおろか、最初の火の玉の時点で落下したり、松葉が2,3回飛び散ってすぐ終了なんてこともありますよね。

今回、実際に試してみて驚いたのは、大江戸牡丹不知火牡丹も、火花の飛び散りが大きいこと。松葉の拡散が20センチぐらいありました。個々に差はあるものの、全体的に燃焼時間が長く、火花の変化も数段階、確認できるものが多かったです。

牡丹、松葉、柳、散り菊に移りゆく様子は繊細で、はかない人生になぞらえて観賞し、静かに物思い更けってしまいます。

国産線香花火

寺田寅彦博士の備忘録には、線香花火の一本の燃え方には「序破急」があり、「起承転結」があり、詩があり音楽がある、と書かれている。
そこにはいつの時代であっても日本人の心を打つ、わび、さび、はかなさ、もののあわれがある。まさに300年続く日本の伝統美である。

東京蔵前の花火問屋 山縣商店コラムより

国産手持ち花火は、一本一本じっくりと。

国産手持ち花火

国産線香花火のついでに、国産の手持ち花火も購入してみました。これが意外に面白くてハマります。線香花火のような気遣いは必要ありません。色の変化が明徴で、とてもきれいに発光していました。

国産手持ち花火 国産手持ち花火 国産手持ち花火

購入した中で、個人的に順位をつけるとしたら、1極み、2火の玉すすき、3五変色すすき、4粋、5追っかけスパーク、6点滅すすき、7トロピカル、8華の滝。

どれも花火職人の心意気が伝わるものばかりです。極みより値段が30円安いのですが、火の粉の落ちるラインを伝うように、スパークが光って滑リ落ちる様子がまさに粋。極みはスパークの量も多く、華やかで誰が見てもきれいです。

追っかけスパークは、本当にピンクの火の少し後ろを、スパークの火が追っかけていきますよ。変色系のものは、青い色が、まるで日本の蝶アサギマダラ。浅葱色の先に臙脂の炎が燃え、うっとりしてしまいました。

国産花火は名古屋市名東区にある人形のすえまさで買えます。

国産花火、人形のすえまさ

今回の花火は、全てこのお店で購入。バラ売りで、打ち上げ花火、噴出花火、手持ち花火、線香花火、様々な花火が並んでいます。

常連客の小学生達に、「極み」を買うなんてツウだな、などと言われました。1本60円の「極み」は、そこそこ高価な花火。でも、彼らにとってお小遣いで手に届く範囲です。

まるで駄菓子屋さんの、花火屋さんバージョンですね。もちろん、お子様連れのお母様方もいらっしゃいましたよ。

国産線香花火、人形のすえまさ 国産線香花火、人形のすえまさ

すえまさ商店は人形屋さんですが、5月頃~9月中旬まで花火を販売されています。今時はネットで購入もできますが、色とりどりの花火を眺めながら、一本つづ説明を読み、選ぶのも楽しいです。

歳を重ねると、不意に子どもの頃が思い出されることがあります。日本の線香花火は、そんな夏の懐かしい風景の中にあります。昔ながらの線香花火の復活で、ちゃんと起承転結を見せて終わっていく。やっぱりこれでなくちゃね、本物の線香花火は…

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