かつて塩の道として栄えた伊那街道が通る豊田市足助町。足助の古い町並みでは毎年8月の夜に、竹と和紙で作られた行灯、たんころりんが灯され浴衣を着た人々で賑わいます。
足助の古い町並みを散策する。
たんころりんは日没から午後9時まで開催されます。本日の日没は18時48分。日が暮れるまでまだ時間があつたので、散策することにしました。川では川遊びの子供たちが、水から上がって帰り支度を始めていました。
足助川と呼ばれるこの川は、川沿いの散歩道の降りる道があちこちに設けられています。川辺に吹く風に涼を求めて降りてみると、すぐ近くで蛙の鳴き声がします。声の主はこっそり隠れていて、見つかりませんでした。
足助の古い町並みは、川の南側が西町、橋を渡った北側に新町、新町の東に本町と続きます。たんころりんが灯されるのは、豊田市生涯学習センター足助交流館近くの看板MAPなどでも確認できます。
新町にある、マンリン小路。町には路地が多く存在していますが、ここは蔵が4棟連なり、奥行きが50メートルほどの、雰囲気のある路地で、奥にはギャラリーがあります。
マンリン書店さんでは、コーヒーと自家製スイーツがいただけます。お茶をいただきながら本を読む、そんなゆったりとしたひと時を過ごすとても魅力的な場所。この日は、作家10人のカレー皿で特製カレーとデザートが食べられるイベント中でした。
漆喰で軒先まで塗り固めた塗籠(ぬりごめ)造りの町屋は、重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
夕暮れが近くなってきて、そろそろ、たんころりんに火を灯される町の人々をお見かけするようになりました。こうして、皆さんで協力されているから、この景観が維持されているのですね。
お店の看板も、景観に合わせたものとなっています。大正ロマン的なレトロな字体と色が洒落た感じで、つい何枚も撮影したくなりますよ。
通りのお店の前やバス停に、このような猫様の置物やら、犬様、お殿様、様々なお人形が飾られているのを見ました。ぷらぷら見て歩くのも面白いです。中には本物の猫様にもお会いできるお店もございました。
路地裏のカフェで水分補給
歩き回って、とうとう町の端まできたところで引き返し、暗くなるのを待つのと水分補給のため、路地裏のカフェに入りました。
たんころりんの町並みはおよそ2キロほどの道のり。夕涼みとはいえども、夏は熱中症にならないように注意が必要です。
あんずのソーダです。乾いた喉を一気に潤し、またソーダが爽やかで、クールダウンです。あんずは、ちなみにオーガニック。沈んでしまうのでかき混ぜながら飲みます。
お店には、カレーなどのお食事メニューもありました。
古い町並みのマジックアワーは、とてもノスタルジー。
カフェを出ると、やっと外はマジックアワーに。マジックアワーとは、日没後の数十分ほど体験できる、薄明りの時間帯の撮影用語なのですが、ちょうど夜と昼が入れ替わる時で、黄昏時とか、逢魔が時とも呼ばれている時間です。
たんころりんという、何ともかわいらしい名前は、灯りの元となる「ひょうそく」という道具の形がひょうたんの形に似ていることからだそうです。
竹かごは、足助の竹を裂いてひごを作り、町の人が手作りしたもの。そのかごの周りに、三州足助屋敷で漉いた和紙を貼りつけ、たんころりんは作られます。ひょうそくはシルバー人材センターのお年寄りが作ったものを使っているとのことです。
手作りのたんころりんの、柔らかな灯りが夜の道に揺らいでいます。赤い色が付けられたものや、何か願いが描かれたもの、絵が描いてあるものなど、町の方が楽しまれている感じもありました。
さかたやさんは、和小物と喫茶のお店です。ショーウィンドーの灯りがあまり綺麗で引き寄せられ、見入ってしまいます。
竹かごにビー玉の発想はユニーク、和紙越しの灯りではなくて、ガラスとのコラボです。
そして竹だけの灯り。切れ込みや、丸い小さな穴から漏れ出す灯りが、デザイン的な感じがします。
たんころりんの和菓子を発見です。竹かごの中に、巾着状のお饅頭?試しに一つ賞味してみることにしました。
この形状からはおよそ想像しないお味、食べてびっくり洋風です。外側はコーヒーの葛っぽい感じ、中の黄色の部分はカスタードクリームです。ひんやり、つるんとしてて、甘すぎずなかなか美味しかったですよ。
でもお土産にするにはこの時期、保冷材がいるかもしれませんね。
イベント中は、アーティスト達による路上ライブがあり、浴衣姿で聞き入る人など、人垣ができていました。
道を歩いていると、提灯の下で焼き物をする、香ばしい匂いや、水につけられたラムネ、数多くはありませんが、所々に店が開かれていました。
山間の町に灯る、夏の夜の灯り。
竹の隙間から漏れる光が、地面に放射状のラインとなって模様を描いていました。
山はとっぷりと夜の闇に飲み込まれ、町の灯りに照らされ所々が、幻想的に浮かび上がっています。
川は静かに闇の中に流れ込んでいきます。
市街地では経験できないような、深い闇があるからこそ灯りが一層きれいに映るのではないかと思いました。
夜の闇が悠久の旅人気分を誘う。
夏の夜も更け、三日月を見上げながらの帰り道。
街道を旅する人たちが見上げた月もこんなふうだったのだろうかと思いをはせます。
夜の闇のなか、そんな古い時間の中に滑り込んでしまいそうな不思議な感覚に陥りました。
小渡の夢かけ風鈴まつりと足助のたんころりんと、豊田の山合いの町を続けて訪ねました。いづれも町おこしを目的として、ここ数年の間に始められたことのようですが、ゆくゆくは愛知の妻籠、馬篭といわれるようになると良いですね。
コメントを残す