愛知県尾張旭市、住宅地の中に佇む古民家。普通では通りかからない、ほぼ発見不可能な処で、ひっそりとカフェを営んでいらっしゃいます。丁寧で上質な時間を提供してくれるお店です。
一歩入れば、そこはまるで八ヶ岳。
八ヶ岳にでもきたの?ずっと先まで森が続いていそうに錯覚します。
本当のナチュラルガーデン。人間のエゴで作り込むのではなく、下草を刈るなどして木や草の在るべき姿を維持しています。
すくすく育った生命力にあふれる木々に、鳥の鳴き声。時折、キツツキなどの嬉しいお客様も訪れるとか。
梅雨の晴れ間にお邪魔して、緑の濃い空気が漂っていました。つい大きく息を吸いこんで、爽やかな気分に浸ることしばし。さざ波のようなトチの木のテーブル、どんな大木だったのでしょう。活けられたアジサイが、お部屋の清涼感を演出していました。
英国アンティークのように、手を入れながら住み継がれる家。
昭和の佇まいを残す、築88年の古民家、以前は洋画家さんのお住まいだったそうです。直し直し住むのが、この家を譲り受ける条件だったとのことです。
ブルーグレーに見える素敵な色の壁は、漆喰×墨でオーナーさんが塗られたものです。カウンターは、この家の古材を利用した手作り。お手洗いも一見の価値ありです。diyの腕前もさることながら、センスが素敵なのですよ。
こうして手を入れられ、大切にされた家は、古くなっても味わい深く、ボロくなるどころか独特の佇まいをかもし出しています。日本人はいつから、スクラップ&ビルドの家ばかりを建てるようになったのでしょうね。
このカフェで過ごす時間は、カスミ時間と呼ばれています。
カフェでは、時間の流れ方が、他の場所とは何となく違う気がしました。
家の持つ記憶の中にいる。そこではゆっくりと時が流れている。
訪れる人のなかには、ここで過ごす時間をカスミ時間とおっしゃる、洒落た感覚の方もいらっしゃるとか。
今日は暑かったので、同伴の旦那はアイス珈琲、私は静岡の紅茶をアイスでいただきました。
紅茶は、苦味はあまり感じられず、すっきりとした味わい。日本の紅茶に、ほんのり緑茶の風味を感じるという方もいらっしゃるようですが、私の中では、甘くない黄金糖を飲んでいる気分です。(ますますわかりにくい。🙇)
珈琲の豆は自家焙煎、一杯ずつ丁寧に淹れられます。珈琲豆はある意味フルーツと同じなので鮮度が命、そうなると必然的に自家焙煎になります。
珈琲はフレンチプレスで出されました。我が家の珈琲もこれですが、フィルターを使わない抽出方法なので珈琲の旨みを余すところなくいただけます。
表面に浮いた油分は、珈琲豆の旨み成分、上質な珈琲豆+焙煎技術がないと雑味がでてしまいます。持論ですが、珈琲は淹れ方よりも、豆の品質と焙煎技術が全てだと思っています。
お菓子はショコラティーヌのお塩添え、濃厚ながら、しっとりと上品な甘さです。お塩をちょこっと付けると甘さが増します。
「やりたくないことは、やらないだけです」映画かもめ食堂より。
映画かもめ食堂は、フィンランドで日本人の女性が、食堂を営むお話。
このカフェでくつろいでいると、ふと、この映画を思い出しました。
「やりたくないことは、やらないだけです」
かもめ食堂の女主人のセリフですが、お庭の小さなサボテンも、そう言っているようでした。
飾らず、気負わず、自然体で人とつながれる処、贅沢ではなく、上質な暮らしを疑似体験できる素敵なカフェです。
オーナーさんはセレンディピティな出会いをとても大切にしている気がしたので、お店の場所はシークレットとします。
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